WGLおよびWoT Esportsに関する文章

日本語でWoT Esportsについて述べているテキストが無い(あったけど消えた)為作成しました。間違っている部分やここに書いていない部分があれば訂正したいので、教えてもらえると助かります。内容やおよび誤字脱字については予告なく修正されることがあります。

2017年7月5日作成。

もくじ

  1. WGLってなんぞや
  2. WoT Esportsの歴史と現状
  3. 老害アドバイス

1.WGLってなんぞや

WoTとかWoWsとかWoTBlitzなどを開発・運営しているWargaming(WG)という会社が主催していたWargaming.net Leagueという大会の略称。2013年に開始され2017年6月現在、ESLという外部の会社に運営が委託されている。WoTでのみ行われている。

http://en.wgleague.net/ 公式サイト(英語)

WoTは通常15人対15人でプレイするゲームだが、WGLは7人対7人で行われ、ルールやマップも通常のものとは少し異なっている。WoTゲーム内にあるチームバトルという7人対7人のモードで、WGLのルールの一部を体験することができる。

WGLはWoTをサービスしている各地域で行われていて、現在はWoTの本場ロシア(と周辺国)、ヨーロッパ、アメリカ大陸、そしてアジア太平洋の4つのリージョンがある。略称はそれぞれRU(CIS)・EU・NA・APAC。

著者が現在所属しているCarenTiger(CT)はAPACに属しているし、これを読んだ大半の人達が出場するとしたらAPACのリーグとなる。他のリージョンの大会に出場するには、インターネット回線の通信遅延、時差、言語の問題を解決しなくてはならない。

トップクラスのチームが参加するゴールドリーグと、ゴールドリーグに参加する為の予選という2つの区分がある。以前はシルバーリーグやブロンズリーグ等ランクによる区分けや昇格降格の制度があったが、管理が面倒くさい・大会の運営会社が変わった等色々あり、現在はシルバーリーグ=ゴールドへの予選トーナメント、という扱いになった。

WGLは開催期間やルールが毎年変わる上に、その告知も急なので、WoT公式ポータルやフォーラム等をしっかり確認する必要がある。確認しても書いていない場合はサポートや責任者に問い合わせること。

毎年WGL自体の存続が危惧されている。参加しようと思ったら無くなっていた……みたいな事は十分起こりうる。この問題はゲームとそれに伴う競技シーン全般に付きまとう。一番悲しいケースはゲーム自体が無くなる事だが、今のところはWoTがサービス終了する素振りはないし、WGLも来年度は続行すると思われるので、開催されているうちに参加すべし。

WGLに参加するには

さて、WGLへの新規参入はとてもハードルが高い。現在のWGLで使用される戦車がほぼTier10(1台作るのに約1000~2000戦のゲームプレイが必要)であり、それが複数車両要求されるというのが理由。また、Tier10戦車を所有するだけでなく、戦車の性能に慣れないといけないので、実際にはもっと戦闘数がかかる。戦車を揃えるだけでなく、ゲームシステムに慣れ、マップに慣れ、戦車の特徴に慣れ……と色々上達していく過程を考えれば、現状のWoTのシステムでは5000~10000戦ぐらいは最低でも必要だと考えられる。

なおWoTのランダム戦を5000戦をプレイするのに、1戦を6分と仮定しても30000分、つまり500時間かかる。

戦車以外にもリーグへ参加する為のチームも必須。既存のチームに加入するか新規のチームを立ち上げるか、どちらにしても行動力や勇気がいる。新規のチームを立ち上げる場合は自動的に予選からのスタートとなる。

  • 既存のチームに加入するには

各チームに問い合わせる。チームごとに加入の条件があると思うので確認すること。毎週の練習を義務付けているチームや、所有している戦車や勝率等の成績を基準として設けているチームもあると思われる。当然ながら、ゴールドリーグに所属しているチームの条件は高いだろうし、たとえばオーストラリアのチームであれば英語を話せる事が条件になるだろう。

チームを探しているがどんなチームがあるかわからないよ、という人は知り合いに聞いてみたり、公式サイトのフォーラムやツイッター等を使って、チームを探している旨を情報発信しよう。誰かが教えてくれるかもしれない。著者に言ってくれれば拡散の手伝いぐらいはできる。

(なお著者が所属するCTは現在新規チームメンバーを募集していない)

  • 新規でチームを作るには

ゲーム内で特別な事をする必要はない。7人制の競技なのでどうにかして7人集める必要がある。同じクランのメンバーを誘ったり、既にいる友達と一緒にやるというのが手っ取り早いだろう。実際には病欠など急用で参加できなくなる事もある為、専業のプロでも最低8人はメンバー登録している。チームに10人以上メンバーがいるなら人が足りずに試合が出来ないという心配は減るものの、1試合には7人しか出場できない為、リーダーのマネジメント能力が試される。ルール上の登録上限は12人である。

チームを作ったら予選に登録する必要がある。しかし予選の開催日時やルール等がAPACの場合は公表されていないので(ひどい)、それを待たなくてはならない。今後追記する予定でいる。

7月26日追記

Asiaサーバーの予選トーナメントの開催が8月上旬だとツイッターで告知された。また、ルールは7/70。つまり1チームあたりTier10戦車7両という形式で行われる。

参加の条件についてはハードではあるものの、やるべき事がシンプルだというのはお分かり頂けると思う。

2.WoT Esportsの歴史と現状

歴史と現状について書く。2014年以前の話は当時の状況を見て書いているわけではなく、2017年になって調べ直した内容が多い。著者がWoT Esportsに関わり始めたのは2015年になってからだ。それ以前の話については正確性が落ちる事をご了承いただきたい。また、個別の大会やその勝者というミクロな部分にはあまり触れない。

WoT Esportsの歴史

WoTは2010年8月にサービス開始されたゲームで、2010年11月にはWG主催のトーナメント大会や、3か月間に渡るリーグ戦が行われた。この時の大会ルールは今は亡き戦車中隊戦モードのルールと同じで、最大14人対14人で戦うものだった。15人ではないのは、チームごとに審判が1人必要だからである。

2012年までにはIntelやAsusのようなPC関連会社や、ESLやStarLadder等のEsportsイベント運営企業がトーナメント大会を開いたり、リーグを作ったりとRU・EU方面では一定の盛り上がりを見せていた。そしてWorld Cyber Games 2012という世界最大級のEsports大会の競技に取り上げられた。これらは7人対7人で行われている。

ところで、いつ頃から既に7人対7人で行う大会がメジャーだったのかはわからない。調べてもイマイチわからないため、詳しい人が居れば教えてもらえるとうれしい。少なくとも、2011年12月のIntel Challange Super Cup(参考)の時点で既に7/42フォーマットが採用されている。

WGは2013年2月、ついに自社の名前を付けた大会であるWGLを開始した。RUでは引き続きStarLadderが、EUやNAではESLが運営を行った。APACではGomTVやTeSL、OGN等が入れ替わりで運営した。初期のシーズンには、今よりも多くのプロゲーミングチームがWoT部門を開設し参戦した。1年間に3シーズンを行い、成績優秀なチームが世界大会であるThe Grand Finals 2014(GF)へ参加できた。以降毎年この世界大会は行われている。

2013年7月には、後にWoT Esportsで最大級の結果を収める事になるプロゲーミングチームNaViが、WGLRU シーズン1で優勝したアマチュアチームRUSHと契約し傘下とした。

2013年10月にはゲーム内で7/42フォーマットがプレイできるチームバトルモードが実装された。

2014年11月にはチームバトルのフォーマットが7/42通常戦から7/54攻撃防衛戦へと変更になった。また同12月にはチームバトル用の新マップであるゴーストタウンが実装された。

2015年1月には大きなルール変更が行われ、フォーマットは7/54、試合モードは攻撃/防衛戦となった。今までの通常戦フォーマットや使用されるマップがEsports的にいくつかの問題を抱えていたためだ。各チームはマップごとに攻撃/防衛を2回ずつ担当する事になり、リーグ戦における試合のマップ数は最大5から最大3マップと削減された。

2015年4月には一般プレイヤーが固定のチームを作って戦う新たなチームバトル:ランク戦がゲーム内に実装されたが、しばらくして削除された。正式なアナウンスはなかったが、対戦相手と談合してランクを上げ報酬を手に入れるという、不正行為の温床となったからではないかと考えられる。

2015年6月からはWGLのゴールドリーグに参加する選手達へのサラリーが与えられる事が発表された。これによって、トップリーグであるゴールドリーグの選手はスポンサーを付けずとも、安定した活動をしやすくなった。シルバーリーグのチームにはスポンサーを探す活動をWGが手助けすると発表された(実際に行ったかは不明)。また、これまでの年3シーズン制から年2シーズン制へと変更された。なおインタビュー等ではサラリー/給与などと表記されている事が多いが、諸般の事情により賞金と表記するのが適切である。

2015年12月からは、試合のフォーマットが7/54から7/68へと変更された。また各チームの攻撃/防衛はマップごとに1回となり、リーグ戦における試合のマップ数が最大3から最大5へと増加した。

2016年8月からはWGはWGLの運営を全面的にESLに委託し、ESLは全世界4地域のWGL運営に携わるようになった。年2シーズン制は変わらずだが、トップリーグであるゴールドリーグの登録チーム数が12から8へと削減された。

2017年6月、RUのWoT Esportsにおいて最大級の結果を収めたプロゲーミングチームNaViがWoT部門の解散を発表し、彼らの4年間の活動に終止符が打たれた。解散の理由については、賞金や大会開催数などから見てWoT Esportsシーンが2013年から前進していないことや、WGが過去3年間、WoTをEsports用のゲームとして開発してきていないことが原因である、とアナウンスされた。

WoT Esportsが過去に抱えてきた問題について

WoT Esportsが過去に抱えてきた問題と、それをどのように解決してきたかについてをここで述べる。なお解決していないものもある。

WoTはEsportsとしてはランダム要素による影響が多すぎるという一定数の批判意見が昔からある。+-25%の砲弾貫通力、+-25%の砲弾ダメージはドラマこそ生むものの、こういったランダム要素による勝ち負けは実力を反映していないのではないかという主張だ。しかし著者が試合を見たり、実際に体験した結果を踏まえて言うと、これは大きな問題ではないと思われる。なぜならWoT Esportsにおいて、最終的に勝つのは殆ど同じチームだったから、つまり乱数よりも実力の方が反映されていると考えられるからである。

とはいえ、乱数で勝ち負けが決まることが無いわけではなく、その場合は負けた側にとっては納得しにくいものになる。競技に興味のあるプレイヤーがEsportsシーンで試したいのは運ではなく自分の腕であるという事にも留意すべきである。上記のランダム性からWoT Esportsはプレイするに値しないという意見にも一理がある。

初期のWoTではプレミアム弾薬やプレミアム消耗品をGoldでしか購入できなかった。Goldは現金で購入する他クランウォーズやトーナメントの景品として配布されるものである。つまり、WoT Esportsの初期はP2W要素が強かったと言える。この問題は2013年5月に是正され、各弾薬や消耗品はゲーム内の通常クレジットによって購入できるようになったが、これがWGL成立後のアップデートであることに注目する必要がある。

元々WGLやその前身のトーナメント大会は7/42フォーマットで行われており、ランダム戦やクランウォーズとは勝手が違った。その戦闘形式はゲーム内に元々用意されているわけではなく、また、7/42フォーマットでゲームに参加するにはゲーム外ポータル等から登録する必要があった。クランウォーズもゲーム外特設サイトでの操作が必要であったが、その操作をしなくてはならない人間はクランに最低1人居ればよかったので、参加者全員に負担を強いるトーナメント大会とは違った。

ゲーム内で7/42フォーマットのチームバトルが実装されるのは、WoT Esportsが流行り始めて数年経ってから、2013年10月を待たねばならなかった。依然としてゲームクライアント内だけの処理でトーナメント大会に出場登録することはできないままだった、というか2017年現在でもできない。こういったハードルの高さから、新しくWoT Esportsに関わろうとするプレイヤーを増やす事が出来なかった可能性がある。

実際のWGLの試合における問題

ここからは実際の試合のフォーマットや、その変遷について述べる。

WoTというゲームの仕様上、相手を待ち構える側の方がとても有利である。移動中は発射した砲弾の命中率や車両の隠蔽率にマイナスの補正がかかる為、弾は当たりにくく相手に見つかりやすくなる。その状態で戦った場合は待ち構えている側が勝利する可能性が高い。停止している為隠蔽率が高い状態なので、相手に見つからずに先制攻撃ができるし、砲弾の命中率も高くなるからだ。待ち伏せする相手を移動させる為には軽戦車という移動時に隠蔽率の下がらない車両を使って偵察したり、自走砲という支援車両を使ったり、陣地を占領して相手を防衛の為に移動させる等の工夫が必要になってくる……という点がこのゲームの戦略的な部分であり、(恐らくはだが)WoT Esportsのセールスポイントでもあった。

しかし2013年6月に行われたバージョン8.6の実装によって、自走砲が弱体化してしまったり、その後のバージョン8.7では偵察に使われていた軽戦車が削除されてしまった。また、攻撃側が陣地に入る事すら難しいようなマップも存在した。戦車の性能変更や戦術の進化によって、編成の固定化も進んでいった。結果的に7/42形式の試合の一部はとても退屈だった。

当時のWGLのルールはランダム戦と同じ通常戦で、仕様上引き分けが存在した。ゲーム取得数が多いチーム等は意図して引き分けを狙って有利に試合を進められたし、そうでなくとも苦手なマップを専守防衛し引き分けを狙う戦術も採用された。

専守防衛が強い場所では、守っているチームを無理に崩そうとして攻め側が少しでも不利を引くと、相手の逆襲を受けて攻めた側が壊滅してしまう。先ほど説明したように、WoTは防衛側のアドバンテージが大きいゲームである。リスクを取って攻撃するという行為が自殺行為になりかねなかった。その為お互いのチームが10分間陣地を守り続け、制限時間切れでゲーム終了という試合も起きた。

2014年4月に行われた、WoTにおける世界一を決める最初の世界大会The Grand Finals 2014決勝戦の動画である。第三ラウンド、試合序盤にNaViの偵察車両を倒したVPであったが、その1両分の有利だけでは攻め切れないと判断し、残り8分間ずっと何もしなかった。車両数で不利なNaVi側は当然守りに回り、そのままタイムアップ、引き分けとなった。

選手は実際に戦車を操作しており勝敗には大金もかかっている為まだ画面に集中できるが、視聴者は椅子に座って何も起きない画面を見上げているだけである。感じるつまらなさは段違いだったと考えられる。

また、もっともつまらない動きのない試合としては以下のようなものがある。つまらないものを紹介するのも心が痛むが、2014年の10月に行われた以下の試合を10分間見ていただきたい。ロシアで行われたWGLRU 2014 シーズン2のオフライン決勝大会、マップはルインベルクである。

会場でこれを見るのは本当にたまらないだろうが、放送でもこれを10分間も見せられるのもつらい。著者も個人的にはこんな退屈なゲームをプレイしたくない。

もう一度書くが、オフライン大会である。そして、このような展開は1度だけではなく、3日間に渡るオフライン大会中繰り返された。最後の決勝戦でも当然のようにそうなった。

WGもこの点を問題と考えていたのは間違いなく、いくつかの改善案を検討していた。そこでプロチームを交えて話し合い、状況を改善する為にルールやフォーマットを変更することにした。その試行錯誤の一部を我々は動画で見る事ができる。

2014年に行われた2つのテスト、片方は7月に行われた7/68フォーマットで通常戦モード。もう片方は9月に行われた7/54フォーマットで攻撃防衛戦モード。攻撃防衛戦とはゲーム開始時点で攻撃側と防衛側に分かれ、敵殲滅・陣地占領・陣地防衛という勝利条件を目指すものである。防衛側は2つの陣地を守らなくてはならない一方で、攻撃側は2つのうちどちらかの陣地を占領すれば勝利である。2つの防衛側陣地は離れた場所に配置され、1カ所で待ち伏せする専守防衛戦術が行いにくくなっている。

このフォーマットは2014年11月にチームバトルモードに導入され、評判もよかったのか2015年1月から全リージョンのWGL 2015 シーズン3から採用される事になった。

ちなみに新ルールがチームバトルに導入された時のトレイラー。先ほどのとても興味深いルインベルクが冒頭でネタにされている。

2015年10月頃にも似たようなテストが行われ、最終的に現行のWGLフォーマット、7/68攻撃防衛戦が誕生し、同12月からWGLへと導入された。これについては著者も参加し、テスト試合を放送したものが残っている(参考 ビデオ50分ごろから)。

7/54から7/68への変更についてだが、一部の強すぎる戦車が大量投入されたことや、使われている戦車のTier的に個人技による結果の差が出にくい等の問題があったとされている。一方7/68フォーマットになった弊害として、試合で使う戦車のTierが上がり、戦車を買う為の金額や開発に必要な経験値が大幅に増加した。結果的に戦車を揃えるのが大変になり、フォーマット変更直後の予選参加者は若干減少した。

7/68フォーマットが採用されてからは、WTE100という駆逐戦車がゲームから削除されたり、スウェーデン戦車が追加されたり、Mausという重戦車が大幅にBuffされたり等色々あったのだが、ルール自体は変更されず。2017年5月には、4度目となる世界大会、The Grand Finals 2017が開催された。

なぜWoT Esportsは下火になったのか?

さて、2013年の時点ではそれなりの注目を浴びていたWoT Esportsだが、2014年以降は様々な理由で下火になっていった。先に述べたようにWoT Esportsには問題が沢山あり、コンテンツが参加者・視聴者にとって期待外れだったというのが原因の一つだったのは間違いない。しかし、それ以外にもいくつかの理由があると考えられる。

WGはあまりWoT Esportsにリソースを割かなかった。金額はともかく、ゲーム開発の部分においては殆ど割いていない。4年間でWGが行ったWoTアップデートは30回にものぼる。しかし一方で、その中でWoT Esportsに関する目的で行った大きなアップデートは、チームバトルに関する2回か3回程度のものだけである。バランスの調整として陣地の場所の変更や細かいマップの修正ぐらいはあったものの、それも片手で数えるほどだ。その間、WoT Esportsに期待をしていた人たちは多くの不満を抱えながらプレイ・視聴し、そして離れていった。

WGとWoT Esportsの関係性を表すエピソードに、試合観戦用オブザーバーにまつわる話がある。現在のWoTには、トレーニングモードでの試合を観戦する為の特別なオブザーバーモードが存在するが、初期のWoTにはそれが存在しなかった。そしてそれを実装する気もないとWGは発言していたとされる。その為、試合の観戦が必要な審判や放送のカメラマンなどは、Tier1戦車で試合に参加していた。それを味方が撃って倒してから、試合が始まるのである。

しばらくして、戦車を試合に出さずとも、他のプレイヤーの視点で観戦できる機能を持った観戦用オブザーバーが実装された。しかし、これも長い間一般のプレイヤーに対しては開放されなかったため、一般プレイヤーがトレーニングルームを使ってイベント行う場合は問題となった。オブザーバーモードをプレイヤーが利用できるようになったのは、2014年の7月から。2011年から3年続いた7/42フォーマットの終盤の時期である。

NaViが言うように、WGがEsportsシーンを念頭に置いてWoTを開発してこなかったという指摘については、これらのエピソードからも事実だと考えられる。何かしら問題が起きてからその対応の為に仕様を変更する、というケースが多かった事は、上記の話を読んでもらえば理解してもらえると思う。

内部的にはトーナメントマネジメントシステムという、トーナメント大会の管理システムが新しく稼働し、それによってWoT Esportsの参加者が増えていっているらしい。しかし、それを我々が実感する機会はないと言っていいし、WGも具体的な数字を公表していない。

一方でWoT本体のアップデートによってゲームそのものが変化し、WoT Esportsが大きく影響を受けてしまったことは何度もある。バージョン8.6の自走砲仕様変更であったり、バージョン9.6の散布界変更であったり、バージョン9.14の新物理演算エンジンであったり、バージョン9.17.1のMaus大幅強化であったり、バージョン9.18の軽戦車仕様変更であったり。シーズン中に仕様変更が入る事が多く、著者もWGLのプレイヤーとして対応に苦労した。試合の当日にアップデートが行われ、そのデータのダウンロードに時間を取られてしまい……という経験もある。そして去年と今年は年1度の世界大会であるThe Grand Finalsの直前に大きなアップデートが入り、各チーム戦術を練り直さないといけなくなった。2016年のGFにおいて、仕様変更とその調整が不足したことによって起きた痛ましいドラマは記憶に新しい。

WoT Esportsが2013年から前進していないということについては、外側からは事実に見える。WGLライブ放送の視聴者や視聴時間も増加傾向にあるとWGは発表しているし、参加者についても増えているという風に伝えられてはいる。しかし何倍・何%増加というような相対的な表現が使われる事が多く、客観的な数字をWGは公表することが少ない。もう4年も続いているのに、その4年の変化を数字で追うことができない。だから我々の目に見える形で変わったとは今の所言い難いし、NaViのようなトップクラスのプロチームが参加できる大会の開催数などが減っていることだけが目につく。成長が見えない物には投資ができない。結果的に、多くのプロゲーミングチームは撤退していった。

WGのスタンスに問題はなかったのか?

ゲーム外からWoT Esportsがあまり注目されなくなっていった原因の一つとして、WGの排他・独善的な態度が影響したという話がある。WGがEsports大会を行いたい企業に対して、許諾を出さなかったという噂があるのだ。公式のWGLがあるのだから、他の大会は要らないとWGが考えていた可能性は確かにあり、実際WGLの開始された2013年以降、WG以外の企業が主催するWoT Esportsの大会は数を減らした。

噂の真偽は不明だが、WGが問題ある態度を示す企業体質だったという事を示す話はいくつかある。たとえばフランスのソミュール戦車博物館へのWG出禁事件である(参考)。

ゲームのアップデート回数や頻度の割にはゲーム内容が進歩していない点についても注目したい。登場する戦車の数以外に、ここ数年で重点的にWGが改善してきたと推測できるのは、ライバルとなる他社製ゲームに対抗するための、戦車やマップのグラフィック、リアルなエンジン・砲撃サウンド等である。ゲームをゲームたらしめる本質的な部分へのアプローチではなかった。

2013年以降ゲームを拡張しユーザーに大きな影響を与えたアップデートには、チームバトルモード及び拠点戦モードのような新モードがある。また、パーソナルミッションやリザーブのような個人への報償、敵車両の発見に際したラグの軽減や視界範囲の刷新などの仕様変更も行われた。他にも、ミニマップへの車両名表示やダメージパネルの実装など、ゲーム外の開発者が非公式に配布していたWoTにおける機能拡張modについては、公式の仕様として導入された。このあたりは全体的にはユーザーからの評判がいいアップデートだったが、30回もメジャーアップデートを行ったのにこの程度しかゲームが改善されていないのが問題である。ちなみに、これら非公式modの便利な機能を公式に導入することについては度々ユーザーから要望を受けていたものの、WGは技術的な理由(導入すると、パソコン性能が低いユーザーに問題が出るという理由)から、実装を長い間拒否していた。

評価のいいアップデートはあったが、評価の悪いアップデートもあった。他にも様々なアップデートが行われたものの、ここで取り上げなかったいくつかの新モードは問題があって削除されてしまったし、登場した新マップも何度かの改変の後、問題の根本的な改善が出来ずに結局は削除されてしまったこともあった。せっかく新要素が実装されても、そのうちいくつかは削除されてしまい、また古くからある戦車中隊戦モードやマップが削除されているので、実態はともかくゲーム全体に窮屈な印象を抱いてしまう。WoTというゲームの改善・拡張のための開発の部分で思うような成果が出ず、足踏み状態が続いていると感じられる。このような全体的な停滞傾向がWoT Esportsに影響を与えたとも考えられる。

アップデートに関してプレイヤーの支持・理解を得られなかったこともある。WGは2015年10月、WoTにおける既存の問題──チート対策やマッチングメイカーの不備、自走砲のバランス等──を改善して欲しいという要望を無視し、P2W要素を加えた大規模なアップデート、バージョン10.0・通称ルビコンを発表した。しかし、このアップデートはプレイヤー側の猛反発によって実装がキャンセルになってしまった。2013年から2015年の時期、WGがプレイヤーファーストではなく、会社ファーストに傾いたゲーム開発・運営を行うようになっていったことは多くのプレイヤーが感じており、とうとうその不満が爆発した形だ。ルビコンに関する大きな騒動は、WGの開発姿勢とそれに反発するユーザーという状況を示すわかりやすい例だと言える。

2016年になって、WGはWoTの開発姿勢が誤っていた事を認め、よりプレイヤーを満足させる良いゲームを作っていくと声明を出した(参考)。実際にこれ以降は、チート対策やマッチングメイカーの改善、自走砲のリバランス等に取り組み、ユーザーの声を聞き入れる姿勢を見せている。

現在のWGは歴史的な意味を持つ戦争映画や戦車博物館との協力だけに留まらず、ロックバンド、アニメ等への多彩なコラボレーションを見せており、柔軟な企業体質に変わってきたのかとも思われる。それを示すのが、ゲーム内への歴史的ではない架空戦車の実装だ。

2013年、ガールズアンドパンツァーというアニメとWoTはコラボを行った。これらはあくまでゲームの仕様を弄らず、アニメに登場する戦車の見た目や搭乗員の音声をユーザーサイドで置き換えられるmodでしかなかった。この頃のWGの姿勢として、歴史的な正確さをとても大事にしており、アニメの中に登場する戦車や、史実的でない迷彩塗装などをゲームに実装するというような事はなるべくしないようにしていた。しかしそれ以降に発表されたWoTBlitzやWoWsなどで行っている各種アニメとのコラボは、実際にゲーム内へと戦車や艦艇、ガレージ等を実装するものだった。そして2017年6月には、他社であるセガのゲーム、戦場のヴァルキュリアに登場する完全に架空の戦車を、Asiaサーバー限定ではあるもののWoTのゲーム内に実装するというコラボを行っている。

このようにユーザーや他社に寛容になっていく一方で、2017年5月にはSirFoch事件が起こった。Grand Finals 2017を記念してリリースしたプレミアム戦車やWGをYoutubeで批判したSirFochというYoutuberを、WGEUが著作権侵害で訴えようとした事件である。企業が1ユーザーを脅迫するというショッキングな事件は大きな波紋を呼び、Kotaku(参考)などのニュースサイトで取り上げられ炎上した。

この炎上騒動はGrand Finals 2017の直前に起こった為、著者は実に悲しい気持ちになった。まあ、そもそもモスクワ開催のGFは英語圏では注目度が低く、あまり関連付けて取り上げられることもなかったのだが。

これからWoT Esportsは流行るのか?

WoT Esports普及への努力という点について、現在のWGのやり方には問題がある。

7/42の時代後期は、WGLでよく取られる戦術や戦車について解説する動画を作ったりしていた。7/54への変更の際はWGLへの導入に先駆けてゲーム内でチームバトルモードを遊べるようにした。こういった取り組みが過去にあり、実際に作ったコンテンツは評価されている。チームバトルモードはロシアやヨーロッパにおいては一定の人気があるコンテンツとなっている。

しかし現在の7/68攻撃防衛戦ルールはWGLに導入されてから1年半以上経っているが、未だにゲームクライアント内ではそのモードでプレイすることができない。全世界に何百万人といるWoTプレイヤーの中で7/68ルールに馴染みがあるのは、トップリーグに所属するもしくは過去に所属していた400~500人のプレイヤーと、その予選に参加したプレイヤー達、ゲーム外ポータルサイトやFaceit・ESL等からわざわざ登録してプレイするマニアックなプレイヤー達と、WGLの放送を見ている人達に限られる。この状況は明らかにおかしいと思われ、早急に対応してくれることを願う。

著者としては、ゲームクライアント内でトーナメント大会に登録できるようになれば、そしてもっと多くの大会が開かれるようになれば少しずつWoT Esportsは活気づいていくのではないかと考えている。

長々と書いたが、過去そして現状のWoT Esportsについて、WGがどのように考えているかを感じ取れるインタビューを紹介しておこうと思う。

How Wargaming Supports Grassroot World of Tanks Esports(2017/04/18)

いくつか内容を和訳して抜粋すると

  • プレイヤーが自分の時間にトーナメントに参加できるように仕組みを開発した(前述したトーナメントマネジメントシステムのこと)
  • 草の根のトーナメント大会に現金の報酬を持ち込みハイレベルな争いにしたせいで、アマチュアやカジュアル層が萎縮してしまった
  • 多くのプレイヤーはただ自分達が遊べる時間に、楽しむために遊びたいだけだ

というような事が書いてある。

あくまでこれは著者の想像にすぎないのだが、WGはWoT Esportsの初期、身の丈に合わない盛り上がり方をしたことを失敗だと考えているのではないだろうか?初期には多くのプロゲーミングチームが参入してきたが、実際の所それがプロチーム側の過剰な期待だったのは、この4年間の結果から見ると明らかだ。WoT Esportsが競技として、そして見世物としても成熟していなかった。大会は減り、ルールは頻繁に、そして大幅に変えられてきた。

もう一度身の丈にあった所から再スタートし、草の根からWoT Esportsを広めて、それを楽しむ中から競技シーンを志すプレイヤーが出てくれば……確かに時間はかかるものの、そうなれば理想的である。結局のところ、必要なのは人口なのだ。人口の絶対数が増えれば自然と活気づいてくるし、活気がある所に目をつけて、企業が宣伝のために大会を開きたいと考えるかもしれない。WoT Esportsに触れた経験があるプレイヤーが多ければ多いほど、WoT Esportsは魅力的になるのである。

ちなみに日本に居るとむしろWoT Esportsのメディア露出がどんどん増え、既にかなり活気があるかのようにも思える。これはWGJapanや大会スポンサーの企業、一時期の低迷期を経験してなおシーンを追いかけてくださる各ゲームニュース系メディアのみなさまのおかげである。この場を借りてお礼申し上げます。

 

7/8追記 元NaViのキャプテンLebwaへ行われた7/1のインタビューが面白かったのでいくつか意見を抜粋する(参考)。

プロゲーミングチームが再びWoT Esportsに興味を持つためにWoTはどうすれば良いのか?という質問に対し、

  • リーグが絶対に必要
  • 新規チームへのWGのサポートが必要(現在は全く無い)
  • 第三者組織の関与するトーナメント大会が必要

おおむね著者やWG、そして別のリージョンのプレイヤーの認識は一致していると言える。

7/42の終盤はつまらなくて、ただ賞金の為にプレイしたとも書いてある。まあそうだろうなというのが著者の感想だが、当事者、それも歴代最高の成績を収めたプレイヤーの証言という所に意味がある。

あとは、インタビューで述べられていた、新規プレイヤー&チームへのサポートという所もここに追記しておく。

新規のWoT Esportsプレイヤーにとって大きく障害となっているのは、一つはWoT Esportsに触れるまでの必要戦闘数などの敷居の高さだが、もう一つは続ける為の出費の多さである。今回書く場所がなかったので触れなかったが、この出費が始めた後の大きな足かせになっている。

実はCWも含めたWoTの競技シーンは、ゲーム内通貨であるクレジットが非常にかかる。まず戦車を買わなくてはならないし、勝とうと最善の準備をしようとすると、良い消耗品や砲弾を積まねばならない。専門の練習も必要になってくる。ゲーム内の特別戦として組まれる大会の試合では、クレジットの収入もあるし、使ったクレジットでゴールドという入手経路が限られる特別通貨が手に入るので、対価として納得できる。しかし、大会で勝つ為に練習をする場であるトレーニングモードはそうではない。消耗品や弾代がかかり、収入は0なのでひどい赤字になるのである。たった1度のゲーム、たった数分で20万クレジット以上赤字になることもしばしばである。

ゴールドリーグやシルバーリーグの選手達には特別なアカウントが支給され、練習の際の出費を気にしなくてよくなるのだが、そこまでの道のりが正直言ってとても厳しく、トップ層とそれ以外には環境的に大きな格差がある。トップリーグへの昇格降格戦では、そのように特別な環境で長期間練習できている降格候補チームと、そうではない昇格候補チームが対戦する為、あまり公平ではないのは事実である。

今はリザーブ等クレジットを稼ぐ手段が増えたので少しだけマシにはなったが、過去に日本でWoT Esportsを始めた人たちは、練習の費用を捻出する為に、自分のガレージにある戦車を売ってやりくりしていたそうである。こういう状況を改善する為に、著者含めWoT Esportsに関わる人間の多くがWGへの陳情を提出している。改善されることを祈りたい。

3.老害アドバイス

最後にWoT EsportsやWGLを始める、続けていきたいというプレイヤーに向けて大事そうなことを何個か挙げておく。果たしてこれだけの長文を読んだ後にこれを読む物好きが何人居るのかという話もあるのだが、そういう人達にこそ伝えたい内容でもある。

  • WoTを好きでいるうちに始めること

単純に、好きじゃないことをやるのはつらい。それで競争するというのならなおさらだ。やりたいと思ったら、好きでいられるうちに始めておこう。どんな面白いゲームにも普通は飽きがくるし、スケジュールの都合や年齢的な衰えで満足にプレイできなくなることもある。タイミングを逃さないこと。

  • 仕様・ルール変更に萎えないこと

1~2ヵ月に1回アップデートが来るオンラインゲームなので仕様が変わることは仕方がないと割り切ろう。新しい仕様をどう悪用して相手を倒すかと前向きに考えるといい。また競技なのでルールが変わることもありうる。その変更に対しても良いリアクションが必要。

  • 定期的にカジュアルトーナメントなどで勝負すること

練習はあくまで練習であって、本番ではないという事に注意すべし。いくらトレーニングルームで練習試合をしても真剣勝負の練習にはならない。何故なら練習試合に勝っても報酬は貰えないし、負けても予選敗退にはならない。勝つことで何かが得られ、負ける事で何かを失う場で戦うというプレッシャーのある状況に慣れよう。さもなくば本番でプレッシャーに負けてパフォーマンスを大幅に落としてしまう。そしてそもそも本番では、プレッシャーによってパフォーマンスは大なり小なり下がってしまう。それに慣れておかないと、パフォーマンスが下がる自分達に対しても動揺しパニックを起こすことになる。

 

投稿者:

moudame

好きなものはメロンです

「WGLおよびWoT Esportsに関する文章」への2件のフィードバック

  1. 貴重なお話、とてもありがたく拝見させて頂きました。
    特に、過去のWoT Esportsの歴史はとても興味深く拝見させて頂きました。
    色々と問題が多いとは思いますがWGL、WoT、がいい方向に向かう事を切に願うと共に、moudame氏のこれからの活躍にも期待しています。

  2. >su_san_san
    コメントありがとうございます。2014年以前のWGLについてはサイトも消えていますし、アーカイブという点において大きな問題がありますよね。当時を知る日本人も絶滅寸前ですし、私が書くしかないなと。こういう点も運営サイドに改善をお願いしたいですよね。
    ご期待に添えるように頑張りますので、是非これからも応援してください。

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